これまでの仕事で代表作は何か?とたまに聞かれる。
何をもって代表作とするか基準が曖昧なので都度答えに窮するのだが、どれが知られているかと問われれば、それは「GReeeeNのアイコン」ということになるだろう。傘寿をとうに過ぎた母親や親戚のおばさん、教えている20代の学生たちも知っていたから。
「ロゴをリニューアルしたい」とマネージメントから連絡があった。今年GReeeeNはデビューから15年を迎える。このタイミングで次のステップへ向かうためにロゴを一新したいという要望だった。
デビュー以来、GReeeeNのロゴはメンバーの成長に合わせるように、時代の移り変わりに呼応するように少しずつ進化させてきたが、今回のリニューアルは歯をモチーフとしたスマイルマークにこだわらず、まったく変えてしまってかまわないという。
ブランドや商品のロゴを改定するのは珍しいことではない。これまでも、時代性や視認性、会社の経営方針変更などを理由にロゴを変える仕事もしてきた。しかしGReeeeNのロゴとなると大幅な改変は躊躇した。
アーティストロゴは有名なものがたくさん存在するが、GReeeeNが他と違うのはメンバーが一切顔を出さないという点にある。知っている楽曲を耳にした時、まず連想するのは歌い手の顔、歌っている姿が普通だろう。だがGReeeeNにはそれがない。実態に触れられないファンにとってそのロゴはGReeeeNそのものなのだ。
GReeeeNのロゴは誰のためのものなのか?
15年を経た今、もうGReeeeNのロゴはメンバーだけのものではない。それはグループを愛し、応援してくれているファンのためのもの。そして、これからGReeeeNを体験するまだ見ぬファンのためのものではないのか。
結果提案したのは過去最大級のスマイルマークだった。こんな時代だからこそ、より大きな笑顔を届けたいというメンバーの想いをデザインに込めた。
昨年末、GReeeeNは初めて紅白歌合戦に出場した。それはデビュー以来はじめてのテレビ出演だった。知り合いから「これは本物か?」と何本か問い合わせがあった。ご想像におまかせしますと煙に巻いておいた。
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D / YAMAGUCHI DAISHI